つくり手インタビュー:古庄伸吾(WEB制作・ロゴ)
「Ajiuの杜」のロゴやホームページの制作を一手に引き受けている古庄伸吾さん。「絵描きになりたい」という幼い頃の夢をあたためつづけ、20代でカフェの共同経営や飲食店の仕事に携わる傍ら、独学でイラストレーター・デザイナーとしての活動をスタートしたという異例の経歴の持ち主です。 飲食業とデザイン業という二足のわらじを履いていた5年間を経て、デザイナーとして独立したのは2009年頃のこと。今では全国各地の事業者から、ロゴやホームページ作成の依頼が届くという古庄さん。Ajiuの杜のホームページにどんな思いが込められているのか、お話を伺いました。
ー“ロゴに特化したデザイナー”、という形で事業をはじめたそうですね。
古庄 雑誌や広告のデザインではなく、ロゴに特化したデザイナーとして事業をはじめたのは、もっとお客様と直接的に関わりたかったから。PREO DESIGNで掲げている“創業者やちいさな事業者向けのデザインプロデュース”というのは、自分が商売をしていた時期に欲しかったサービスでもあるんです。
ーでもなぜ、ロゴだったんでしょう?
古庄 ロゴには、企業やサービスについての世界観がこめられています。名刺やパンフ・リーフレットなど、その企業・サービスについて知らせるツール関係も、ロゴがあることでスムーズに作れるようになるんです。 そのためにも大事にしているのが、ヒアリングです。打ち合わせの当初から、クライアントさん自身が「こういうモチーフを使って、こんな配色で…」と、提案してくださることもありますが、そうした具体的なことよりも、そのサービスや企業がこれから10年先、20年先にどういったビジョンを持っておられるかのほうが重要だと思っています。 今の雰囲気やイメージを表現するものを作っても、それがその先ずっと輝いているかというと、そうとは限らない。ロゴはある意味、事業の顔ですから。先々のサービスや企業としての規模感みたいなものが表現されているものでないと、ずっと使えるロゴとはいえません。
ーヒアリングをするなかで、クライアントさん自身のビジョンが見えてくるということもありそうですが、実際にそれをどんな風にデザインに落とし込むのでしょう?
古庄 ご自身が考えておられるものだけでなく、ヒアリング、つまり対話をしていく中でヒントが生まれたりすることもよくあります。そうしたキーワードをもとにマインドマップを作り、ロゴの場合はまず手描きのラフスケッチを作っていきます。この時点では色も入れず、全部鉛筆描き。100以上ものラフスケッチから淘汰していき、最終的に2~3案に絞り込んでご提案していきます。
ーロゴという限られたスペースで、10年先20年先の事業を見越した表現というのは難しそうです。最初に着色しないというのは何か理由があるんですか?
古庄 スペースもそうですし、ずっと使えるものとなると、無駄なものは加えられないのでどんどんデザイン的に研ぎ澄ませていく必要があります。この時点で色が入ってしまうと、どうしてもそちらにイメージが引っ張られてしまう。なので、最初は黒一色でコンセプトが伝わるようなデザインに仕上げ、最後に色をのせていくということをしています。白黒の状態でコンセプトやビジョンを表すものができていれば、先々、ツールや広告展開をしていく上でも応用が利きやすいというメリットもあります。
ーそうしたノウハウをブログで展開されているのはなぜですか。
デザインをはじめた当初、私もフリーランスでやっていたんですが、フリーランスの人って本当に悩みがつきません。特にロゴデザインについては、一般的なデザイン業としては、たまに入ってくるという種類の仕事ですから、経験することも多くないんです。 私の場合、ロゴの制作については早い段階で専門サイトを立ち上げ、ありがたいことに全国から受注をいただいて経験を重ねさせていただくことができました。そうした経緯から、ある程度の流れやロゴをつくる上で必要なことをブログにすることで、フリーランスのデザイナーがロゴをつくる際の何かの助けになればと思いました。
● PREO DESIGN
ー いいロゴをつくるための7つの最低条件
ー今回、「Ajiuの杜」のロゴをつくる上で大切になさったのはどんなことでしょう。
古庄 オーナーの益永さんとお話するなかで伝わってきたのは、住む方それぞれの“自由なくらし”や、地域や自然など、周囲との関係性を大切になさっているということでした。独姑山の麓にあるという立地も魅力のひとつです。そこで、木のシルエットを利用して、3棟が自然のなかにとけこむような感じや、やさしさが伝わるように配慮し、ロゴデザインを仕上げていきました。 「Ajiuの杜」のコンセプトを踏まえ、“自然のなかにある優しい空間”をイメージさせる配色や、“子どもたちがいる賑やかな雰囲気”をイメージしたもの、「Ajiuの杜」の多彩な植栽をイメージしてつくったものなど、いくつかの提案をさせていただきました。
ー「Ajiuの杜」のウェブサイトも制作なさっています。
古庄 ウェブサイトにはそれぞれに目的があります。ものを販売するためのサイト、サービスや知名度をあげるためのサイトなど。そうしたことを表現するためには、デザインだけでなく、そのなかのイラストレーションやコピーライティング、写真などを含めたトータルのご提案が必要だと思っています。 今回の「Ajiuの杜」のウェブサイトについては、「Ajiuの杜」の価値を伝えることが最大の目的です。「Ajiuの杜」の世界観を伝え、ここに住むとどんなくらしが待っているかを想像できるようなホームページを意識して作りました。
ー古庄さんが思う「Ajiuの杜」の世界観というのはどんなことでしょう。
古庄 実は最初、オーナーさんとお目にかかった日にこの場所へ案内していただいたんです。市街地からも近く、ちょっと行けば海もある。まだ更地の段階でしたが、丘からの景色もすばらしく、建物が完成したあと、子どもたちが自然の中でのびのびと遊んでいる姿が目に浮かぶようでした。賃貸住宅のなかでもこれだけ豊かな自然に囲まれているというのは希少ですし、「住民たちが自由にくらしを作っていく」というコンセプトにもとても共感したんです。そうしたことを表現できたらと思いました。
ーサイトの中にも自然を感じさせる部分がたくさんありますね。
古庄 そうしたものを伝えるために、今回はイラストを多用しました。トップページのイラストレーションは、イラストレーターのナガタマイさんにお願いして作っていただいたものです。事前に「Ajiuの杜」の世界観をしっかりと感じ取っていただき、他のページに盛り込むイラストについても、同様にお願いしました。 また、イラストレーションを取り入れるにあたって気をつけたのが、「ファンタジー的な要素が強くなりすぎないこと」です。このサイトをご覧になる方の多くは、「Ajiuの杜」のくらしを知りたい方がほとんどでしょう。「Ajiuの杜」のコンセプトがきちんと伝わり、その先のくらしが想像できる、ということに気をつけてイラストを作っていただきました。
ー施設的な紹介だけでなく、ストーリーを感じられるサイトですよね。今後、このサイトはどんな風に使われていくと思いますか?
古庄 ギャラリーのページなどは、更地の状態から建物が少しずつ建っていく様子を写真で見ることもできますし、これからも少しずつ成長していくサイトになるのではないでしょうか。たとえば先々、「Ajiuの杜」でくらしておられる方々のご紹介や、くらしぶりがわかるようなものなどがあっても、おもしろいかもしれません。「Ajiuの杜」の実際のくらしと同じように、このサイトも“くらす人たちが作り上げていくサイト”になりそうです。